明治27年(1894年)、文楽の創業者、北西亀吉は現在の埼玉県上尾市平塚で日本酒の醸造をはじめました。
10年後の明治37年(1904年)には、上尾市上町に拠点を移します。
上尾は五街道のひとつとして名高い中山道沿いの旧上尾宿という宿場町であり、江戸時代に諸大名の参勤交代や、皇族の下向の中継地として使われました。
また、昔から秩父からの質の良い伏流水が湧き出ることでも知られた、歴史ある地です。
日本の伝統芸能"文楽"。世界に誇る人形浄瑠璃の舞台は、義太夫・三味線・人形遣いの三つの要素で紡ぎだされる物語を通して、国内外の多くの人々を魅了してきました。
文楽をこよなく愛した創業者の亀吉は、この三位一体の精神を米、麹、水で造り出す日本酒に生かしたいという想いを込め、銘柄を"文楽"と命名しました。
秩父からの質の良い中硬水を仕込み水につかい、蔵人が目指す酒質に合わせて吟味した酒米を丁寧に醸した文楽の日本酒は、淡麗な味わいが特徴です。
昔ながらの日本酒を大事に造りつづけながら、市場の変化を見据え、平成10年(2000年)にはスパークリングの開発、平成18年(2008年)にはリキュールの製造を開始し、その後、生もと仕込みへの挑戦、麹の甘酒、塩麹などの調味料、化粧品開発など、従来の日本酒のイメージを覆す新しい試みを続けています。
酒蔵文楽の伝統と匠の技は、大吟醸、純米酒をはじめ、数々の個性ある商品に受け継がれています。酒造りの時期限定の“にごり生原酒”、時を重ねるほどに味わいを深める“古酒”、繊細で軽快な口あたりの“スパークリング”。
文楽は近年、伝統的な仕込方法である、生酛(きもと)造りにも力を入れています。昔ながらの手作業を丹念に重ねて酵母を育て、自然の乳酸菌を取り入れて造る力強い味わいには、日本酒本来のうまさが息づいています。
それぞれの特徴と味わいのあるお酒を、季節やお料理に合わせて選んでゆく中で、一つの蔵を追求していただく楽しみがあります。
古くから、旧中山道沿いは良質な水に恵まれていることで名高い土地です。秩父からの弱硬水の井戸水を仕込水に用いています。お客さまに安心、安全な製品をお届けするために水質検査も行なっております。
古来より日本酒は、神事をはじめ、ひとびとの生活に根付くものでした。
文楽は商品としてだけでなく、四季に寄り添う旬の日本酒、季節の食材に合わせた飲み方や酒器も一緒にご提案しています。
文楽のある席をより豊かな時間にしていただけることが、我々の願いです。
また、文楽の日本酒は、アメリカ、アジア、ヨーロッパなど20か国以上に輸出されています。
健康志向の高まりを背景に、和食がブームに終わらずに定着してきた海外の地で、海を越え皆様に親しまれています。
創業以来、代々培ってきた伝統の技と、時代を捉える先進の心を糧に、国内外に日本酒文化を発信しています。